介護の現場では利用者が「新人の介護者を試すような言動」を行うことがたまにある。わざとキツイ言葉を投げかけたり、介護者を困らせるようなことをするのだ。
こんな時は「過剰反応しない」ということを意識しておくと良い。
例えば「財布がない。あんたが盗んだんだろう」と利用者からあらぬ疑いをかけられることがある。こんな時、つい感情的になって強く言い返したくなるが、それを少し抑えて、自分が無くしていないことを穏やかに説明し、利用者と一緒に探すなど、淡々と今できる最善の事を行うようにするのである。こういうことが何度か繰り返された後に、人が変わったように利用者が心を開いてくれることが介護の現場ではよく起こる。
理不尽な状況でそんなに冷静でいられないと思うかもしれない。もちろん、腹が立つだろう。殆どの人はそうだ。しかし、腹の立て方にもコツがある。「腹が立つ~」ではなく「私、腹を立てているな~」と考えるのだ。「腹が立つ~」だと感情に飲み込まれていて自分をコントロールするのが難しくなるが、「私、腹を立てているな~」だと自分の感情を客観的に観ており、その感情から少し距離をおくことができるのだ。「利用者とコミュニケーションをとっている時の自分の気持ち」を観察することは、介護において特に大切なスキルである。
利用者から「お試し」をいただいたら、「過剰反応しない」を意識して介護をしよう。理不尽の向こうにとても温かい関係が待っている可能性がある。